インタビュー- Interview -

現役アスリート総合格闘家
現役アスリート総合格闘家
飯野建夫さん
ナカチカ株式会社
大学入学と同時に格闘技に出会い、26歳でプロデビュー。
総合格闘技修斗のリングに参戦する元世界ランカー8位。
数年のブランクを経て、世界ランカー復活を目指している。

デュアルキャリアにたどり着くまでの道のり

Q.飯野さんは現在、どのようなデュアルキャリアを歩まれているのですか?

ナカチカ株式会社は、基本的に平日9時から17時半の勤務時間なのですが、有難いことに練習時間を考慮してもらい、15時から21時頃までの勤務が週4回、フルタイムが週1回という勤務スケジュールでデュアルキャリアを歩んでいます。ナカチカでは総務部でデスクワークを行なっているのですが、これがまた楽しいんですよね。

Q.そもそもナカチカとの出会いは?

前の職場の先輩から、既にナカチカでデュアルキャリアを行なっている宮田さんを紹介されたのが、ナカチカとの出会いでした。競技をしている事は、社会を生きる上でお荷物だと感じていた僕にとっては、格闘技に興味を持ってくれたり、働き方について話を聞いてくれる事が衝撃で、ちょっと怖いなと思いました…僕はハメられていると。でも素直に嬉しかった。今までそんな風に向き合ってくれた会社はなかったのですからね。格闘技が拠りどころで、競技の世界で輝いている自分にすがっているだけだと感じる一方で、辞める選択肢は自分の中にないんですよね。数十年、自分の人生の中で費やした時間が圧倒的に多いですし、格闘技が今の自分や人生を創ってくれたと感謝していますから。嬉しいけど少し怖いなと思いながら、半信半疑でナカチカに入社したんです。

Q.実際、競技と仕事を安定した環境で行ってみて何か変化はありましたか?

僕用に雇用をカスタマイズしてくれた社長や社員の皆さんからよく「練習出来てる?」と声を掛けて頂くのですが、正直毎回震えます。今までは上司の顔色をうかがいながらトレーニングを行うものだと思っていたので、いい意味で「この人たち大丈夫か?」と驚きの毎日です。ナカチカに居ることで、格闘技は自分の人生で大切にしても良いものだと思わせてくれましたし、練習に行かせて頂いているお陰で、仕事にも精力的に取り組めています。やはり、精神が充実した状態というのは好循環を生みますよね。だから、仕事も楽しいですし、会社の為に人一番貢献したいと思うんです。

広い世界を見れている事が有難い

Q.仕事をする上で、競技との相乗効果はなにか感じますか?

僕の場合は、競技経験が今の仕事に活きている感覚はないんですよね。今まではスポーツをしてきたので、体を動かす仕事に就くことしか頭になかったですし、率先力になれていました。でも、よく考えたら、この広い世界の中で自分がいる世界はすごく狭い、ということに気が付きました。アスリートの多くは、社会人スキルが衰えていることに悩み、結局スポーツから離れられない。僕は、幸運なことにナカチカと出会って、スポーツとは全く関係のない仕事をする中で、お金の流れや仕事の流れが見えてきたり、大学で学んだ経済や取得した資格を活かせている。点と点が線で結ばれた感覚です。
そういった意味で以前より広い世界を見ていることが有難いですし、楽しいです。

Q.社会人歴10年、今が一番充実しているということですか?

そうですね。アルバイトの掛け持ちや正社員も経験していますが、掛け持ちはとにかく経済的自立の為にスケジュールに休みがない。生活にメリハリがないので心身共に疲れる上に、もれなく不安定が付いてくる。これは昔から思っていたのですが、片足を突っ込んだアルバイトだと、仕事のコアな部分には辿り着けない。社会人としてキャリアを構築する上で、「責任」が伴う正社員として両足を突っ込んで仕事をすることは人間を創っていくことだと思います。アスリートや芸術系の世界では「安定」なんてぬるいと思われるかもしれないですけど、正社員としてデュアルキャリアを始めて、物心共に安定するからこそ、計画が立てられ、競技に「集中」することが出来ていると感じます。腰を据えて二つの人生を着実に歩めています。

Q.アスリートと社員、それぞれの立場から「アスリート採用」のメリットはどう感じますか?

アスリートの立場から採用という観点で言うと、メリットというよりは会社のお荷物になってしまうという思いの方が強いです。僕はただ格闘技という一芸があって、AO入試のような、悪い言い方をすれば情で雇って頂いている…と。スポーツ以外の職種だと尚更、率先力にはなりにくいですし。ただ、競技を続けることを理解してくれているという点が、仕事への1番のモチベーションになります。一

方で社員として感じることは、アスリートは勝負の世界で生きていることで、結果へのコミットや向上心、やり抜く力は長けていると思います。あとは負けず嫌い(笑)そういった能力は仕事をする上で土台として必要だなと。中途採用の場合は、率先力というよりは、少し手が掛かると思いますけど、ひとつのことに打ち込んでいる力が仕事にも活きて、活躍する人財にいち早く成長する可能性が高いと思います。

目指すは過去の自分を超える世界ランカー

Q.飯野選手として、競技における今後の目標は?

復活!いや、過去の世界ランカー順位を一つでも超えることですね。もっともっと上を目指したいです。頑張っても良いんだというモチベーションと、目指せる環境が整っていますから、納得のいくまで格闘技に打ち込みたい。もちろん会社にも恩返しをしたいと強く思ってます。

Q.デュアルキャリアを始める前の飯野さんと同じ悩みや環境にいるアスリートに是非一言

僕は「個の上にアスリート」が成り立っていると思います。この個を磨くことはアスリートとしても必ず活きますし、自分からスポーツを取っても強い個で居たいですよね。そういった点で僕はナカチカの温かさや理解の元、歩み始めた「デュアルキャリア」で、人生で一番充実した毎日を過ごせています。競技をしていることで、選択肢が狭まってしまったり、諦めなくちゃいけないと思うこともあると思いますが、自分が大切にしたい軸をぶらさずに、腰を据えてふたつの人生を歩める「デュアルキャリア」がもっとスポーツ界に広まってくれると嬉しいです。